パンデミックや各地での戦争、気候変動、人間の心の病、まるで地球全体が病に侵されているかのようです。そんな今だからこそ、アート&デザインの柔軟な思考が、世界で強く求められていると感じています。これまでみんなが信じていた経済力や科学技術力、政治力や軍事力に頼りきっていたら、見事にこんなに荒れた世界になってしまいました。大きな力や、ほかの誰かに頼っているだけでは、もう誰も幸せにはなれません。世界には、クリエイティブなアイデアが足りていないのです。
これからも世界は変化を続けます。新たな災いや争い、価値観の転換、国境や政治体制だって変わることがあるかもしれません。そうやって何か変化が訪れるたびに、これまでの「あたりまえ」が崩されていく。だからこそ、何が起こっても、そこから新しい考えを生み出せるクリエイティブ力が必要なのです。これまでの正しい答えを疑い、別の答え「別解」を導き出せるような柔らかさを身につけてもらうための学問、それが「アート&デザイン」です。
東北芸工大は、新しいアート&デザインを学べるだけではなく、活用を試せる貴重な場所です。その大きな理由は、本学が山形という地方都市にあるからです。山形は、単なる大自然に囲まれた美しい東北という側面だけでなく、少子高齢化、人口減少、働き手不足など、多くの社会課題に直面した「課題先進県」です。山形はこの先、日本全体が必ず直面することとなる重要な社会課題に、全国よりも10年ほど早く向き合っています。言わば山形は「最先端の地」であり、「未来の日本の姿」なのです。
現役を引退されたクリエイターの「昔話」ではなく、今を生きるクリエイターの「現実」を伝えなければ、本学が目指す最新のクリエイティブ教育は実現できません。
本学では、現役のプロである教員たちが、自身のプロジェクトや外部からの研究依頼を、学生の教育に活用できるようにプログラムをデザインし、多くの現役クリエイターを専任教員として集めることに成功しています。生き生きとしたクリエイター教員から、制作現場での日々の喜びや苦悩を直接教われるというのは、芸工大だけが実現できた魅力の一つです。
本学が地域から依頼される案件は、年間100件を超えています。芸工大の演習の大部分はリアルな課題です。「クリエイティブをどう社会に活用すべきなのか」という課題を、実社会との関わりの中から学んでいくので、社会との対話力に長けた柔軟な学生が自然に育ちます。
芸術大学に進学する人は、幼い頃から「創作が好きな人」「才能やセンスがある人」、というのはもう昭和時代の話です。「アートやデザインでは食べていけない」と考える方がいらっしゃるかもしれませんが、今やアートもデザインもゼロから学ぶことのできる「学問」であり「教養」、そしてさまざまな「職業」の入り口です。4年間をプロと共に学んだ芸工大生の就職率は、全国の芸術大学でトップクラスです。毎年、学生数の約20倍にのぼる求人をいただいています。東北芸工大は、日々の学びを進路に結びつけ、「就職できる芸術大学」なのです。社会人になってアート&デザインを生かした仕事に就きたい、プロになりたいと思うのであれば、本学はその近道です。
東北芸工大は他の芸術大学とは全く違いますから、できるだけ来て、見て、教員と話して、自分の目で選んでほしい。他大学のオープンキャンパスともよく見比べてみてください。そしてもし、あなたの未来イメージが東北芸工大と重なったならば、ぜひ我々クリエイターチームの一員になってください。
「好きなこと」をやりたい人はもちろん、「美しさを追求したい」「世界を変えたい」人も、「どうして社会はこんなに不平等なのか」「つまらない社会を変えたい」と、世の中にフラストレーションが溜まっている人も、それぞれのいろんな力をここに集めたいのです。
More Art. More Design. More to Life.
私たちと世界を変えましょう。
略歴
中山ダイスケ(なかやま?だいすけ)/1968年 (昭和43年)1月7日香川県生まれ。現代美術家、アートディレクター、(株)daicon代表取締役。「コミュニケーション」をテーマに、絵画、写真、ビデオ等を発表、現代美術の新世代の旗手として国際的に注目される。また共同アトリエ「スタジオ食堂」のプロデュースに携わり、アートシーン創造の一時代をつくった。1997年ロックフェラー財団の招待により渡米、2002年まで5年間、NYをベースに活動。1998年第一回岡本太郎記念現代芸術大賞準大賞、台北(台湾)、リヨンビエンナーレなどの国際展に選出されるなど、展覧会、受賞多数。またファッションショーの演出や舞台美術、店舗などのアートディレクション、商品開発、コンセプト提案など、美術以外の活動も幅広い。山形県産果汁100%ジュース「山形代表」シリーズのデザインや広告をはじめ、行政機関や地域音楽団体、スポーツ団体等との連携プロジェクトなど、「地域のデザイン」活動も活発に展開している。
PHOTO by MAKI ONODERA