中山ダイスケ学長がファシリテーターとなり、学内外からゲストを招いてさまざまな分野の話題を掘り下げる在学生対象のトークイベント【TUAD TALK】。今回のテーマは、「TOHOKU,or ―マテリアルと表現のデザイン」です。本学客員教授の吉泉聡先生とプロダクトデザイン学科教授の酒井聡先生とともに、マテリアルとは何か、制作するに当たって大切にしたいことは何か、学んでいきましょう!
以下TUAD TALKスタッフがレポートします!
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マテリアルと私たち
吉泉さんはなんと生まれも育ちも山形県なのだとか…!
大学で機械工学を学んでいる間にデザインを学びたくなり、今のデザイナーという職業についた吉泉さん。今に至るまでどのような世界を見てきたのでしょうか。
吉泉先生:?最初はデザインオフィスnendoというところに入って、その次にヤマハでインハウスデザインをやりました。そして丁度10年前にこのTAKT PROJECTという会社を始めました!?
そんな吉泉さんは以前美大ってどういう所なんだろう?プロダクトデザインってどういうものなんだろう?という気持ちで任你博にいらした事があるみたいです! TAKT PROJECTではどのようなことを行っているのでしょうか?気になりますね!
吉泉先生:?会社では、デジタル的なものよりも身体性を持って関われるようなものをデザインしていることが多いですね。?
?SONYさんとデジタルを使ってファッションデバイスを作っている人のお手伝いだったり、ブリヂストンさんとコンセプトを一緒に作ったり…。そして海外のお仕事もやらせて頂いています!SWAROVSKIというクリスタルガラスをつくっている会社と一緒に何を作っていくべきかを考えたり、ミラノサローネという所で企業のためのインスタレーションを作ったりしています!?
TAKT PROJECTさんではこれらのクライアントワークに加えて、会社設立の10年前から作品を作って発表することもしているのだとか…!
吉泉先生:?(制作した作品『black blank』について)デザインを振り返ってみた時に、分かりやすい、便利、ということを追い求めて色んなデザインが育まれているなと。使う人がなんだろう、これはどのような意図なんだろう、と考える余地も与えないところまで来てしまっている気がして…。それって、他者の想像する余白みたいなものを奪っている仕事になりつつあのでは無いかと。むしろ、わからないから相手の想像を引き出すようなデザインというものをコンセプトに込めて作品を作っています!?
吉泉先生:?21_21 デザインサイトで、『Material,or 』という展覧会では、展覧会ディレクターをしておりました。?
2023年7月?11月上旬まで六本木の21_21 デザインサイト行われていたMaterial,or という展示。多くの方が足を運ばれた展示だと思います。私も実際に体験してきましたが今まで向き合う機会の少なかった数々のマテリアルを通して、新しい考えが巡ったことを思い出します。
吉泉先生:?この展覧会は、低い壁で仕切られていて、その中にマテリアルがぽんぽんと置かれている形になっています。特徴としては皆膝を着いてみるというかしゃがんで観ている展示でしたね…!?
“コンセプト
__?マテリアル?が意味づけされて?素材?に変わる”
吉泉先生:?例えば石を例に出すと、素材として石を加工し建築やプロダクトとして使われる場合と、信仰の対象として生活の中に置いていく場合があります。このように考えていくと同じ石というマテリアルでも人間は異なる意味付けが出来てしまうのです。?
吉泉先生:?対話をすることによって意味が勝手に発生してしまう。勝手に意味を与えるのではなくて、マテリアルと向き合うことで対話的に意味を紡ぎ出す、発生させる事が重要なのではないかと思っています。?
展示の中には、小さな頃に誰もが作ったことのある泥団子だったり、山形の削りかけというものだったりが展示されていました。マテリアルと対話する機会の少ないこの現代で、マテリアルとは何なのか、どのように向き合って行けたらいいのかを考えて欲しいという想いがあったのですね…!
中山学長:?僕も実際行ってきたんですけど、いやほんとに面白かったです。あの膝を着いて観る構成もなんですけど、サイズ感も良くて、考えさせられる展示っていうのが良かったですね!人によって感想が違うのも面白いですね。?
吉泉先生:?コンセプト的にただ分からないになってしまったお客さんの頭が、はてなにならないか心配だったのですが、自分なりに見つけてくださる感じがほっとしましたね…!?
酒井先生:?自分の中で腑に落ちるものを探しながら展示を観て回る感じというか、隣が見えるくらいの壁のおかげで次はあっちに行ってみようかなと思うあの感じが楽しかったなと思いました!?
コンセプトのあり方
中山学長:「コンセプトなんて、出来上がったものとその面白かった感覚さえあれば、後からいくらでもつけられるじゃないですか。」
吉泉先生:「そうなんですよね!面白いと思ったってことは、何か自分の中にあるってことなんですよね。」
酒井先生:「料理で美味しいと思ったのを、素直に受け入れるか、御託を並べて産地や作り方から美味しいを感じるのか。とかに似ているのかなって。」
コンセプトに悩むことに、作品作りでぶつかってしまうことも多いのではないのでしょうか。自分だけの悩みではないことが知れて安心しました。
中山学長:「コンセプトのことを設計図だと思ってるのかもね。」
「先生にコンセプトを説明する→GOサインを出してもらう→作る
で、設計図(コンセプト)ありきの物だと思っているのかなと。」
コンセプトを重視するあまり、コンセプト頼りになり、そうでなきゃいけないになったしまうこと、あると思います。
中山学長:「本当のコンセプトって、やりながら本当になんとなくいいものができてしまって、後から言葉が出てくる。後からつけていけばいいんですよ。」
酒井先生:「周りからOKをもらいながらじゃないと作れないっていうのが普通になっちゃったからっていうのもありますよね。」
考えて作ることも大切ですが、これいいかも、これが心地いいな、と感じるままに作り始めることもやはり大切にしていきたいですね。
制作に励む芸工大の皆さんへ
酒井先生:「ここの学生さんって、自由に作るっていうのが多いと思います。基盤まで上がったんだけどそこからのジャンプアップとして自由に作るっていうところが一番困るところですよね。」
「方法論を学んでしまっているから、それで答えが見つかると信じてしまうじゃないですか。それは間違いではないしそれで見つかることもたくさんあるけれど、オリジナルに転換するためには自分で焦点を当てて疑問を探すとかをしていくことが鍵になると思います。」
基礎を積み上げ、自分の武器にしてからどう活用していくかで、かなり道が異なっていくようです。
酒井先生:「ものづくりをして楽しめるってどうしたらなるのか吉泉さんに聞きたいです!」
吉泉先生:「目の前にあることをそのまま受け取るのではなく、一度考えることが大事かと思います。やはり新しいものを産んでいくってそのまま受け取った先にはできないんじゃないじゃないですか。自分たちの中で、作ってみることの先に何かあることを信じてるかどうかどうかっていうのが楽しさにも繋がっていると思います!」
今回のTUAD TALKでは、マテリアルと素材の違いや、ものづくりにおいての大切なことをあらゆる視点から学べましたね!日々制作に励む芸工大の皆さんの悩みが軽くなったら嬉しいです。吉泉聡先生、酒井聡先生、学生たちの頑張りのエンジンとなるお話をありがとうございました!
(文:グラフィックデザイン学科 山本凜、撮影:class studio)
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任你博 広報担当
TEL:023-627-2246(内線 2246)
E-mail:public@aga.tuad.ac.jp
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