美術科 工芸コースDepartment of Fine Arts Crafts

[優秀賞]
門脇悠|脚付漆絵八角箱「胸懐」
京都府出身
松本由衣ゼミ
H112×W262×D262 mm 漆、桧、シナ合板、金属箔

人間の内側は、表に出しているものよりも、ずっと多彩で複雑だ。開いてみないとわからないこと、開かれてもなお見えないことの方がもっと多い。蓋を開けることで初めて色を現にする箱に、人間の在り方を重ねた。


松本由衣 専任講師 評
 とにかく大きくて迫力がある、見せ方が奇抜で目立つ、アイデアが斬新で面白い。大学の卒業制作ではそういった作品に目が行きがちである。そんな中でこの脚付漆絵八角箱「胸懐」は一見おとなしく、古典的に見えるかもしれない。しかしこの小さな箱は確かなオーラを放っていて、見る人の足を止め、思わず観入ってしまう力がある。自身の心境を落とし込むものとして相応しい形、箱としての美しさを探り、下地から塗りまで、今まで培ってきた技術を最大限に活かした。またそこに描いた漆絵は、彼女がずっと表現したかった心の中の情景を見事な筆さばきと色彩感覚で具現化することが出来たように思う。漆という素材はその日の自分の行いを全て映し出すように結果が付いてくる。毎日作品と真摯に向き合い、時に泣き、時に自信のある顔を見せたこの制作期間は、彼女の今後の創作に大きな影響を与えるものとなるだろう。漆絵の魅力はもちろん、面を整え、刷毛目、艶加減を駆使して巧みに仕上げた塗りの魅力にもぜひ注目してほしい。