[優秀賞]
釜ヶ澤杏奈|融合する輪郭
北海道出身
酒井恒太ゼミ
2440×1220×840mm 鉄、塗料
作品の幅広い面に描かれた幾何学的な図形や建築物のような形状は私が長く関心を寄せてきたテーマを象徴している。一方、緑の図形はピーマン、対となる部分はりんごをイメージした。これらは大学進学後の自立した生活を通じ、「知ったつもり」だった物事への新たな気づきを象徴している。親の庇護のもと興味を追求していた過去の自分と、社会で地に足をつけて生きる今の自分。その両者が交わることで、人間としての自立を表現した。
酒井恒太 専任講師 評
朝早くからアトリエが閉まるまで、鳴り止むことなく響き渡る金属の音。釜ヶ澤さんが誰よりも制作に時間を費やし、常に手を動かす実直な姿をこの一年間見てきた。作品に見られる鮮やかな色彩とコントラストの効いた図像としての自然のモチーフは、幼少期を沖縄で過ごしたアイデンティティに拠るものだろう。南国の雰囲気を纏う作風には、自らの生い立ちを背景としつつ、その後の生活も含めてこれまでに生きてきた中で目にした様々なイメージの輪郭が融合している。
鑑賞者の視点の動きに合わせて、立ち現れては消えていく様々な図像は、あえて金属の質量感を失ったアイコンとして形象化され、平面のイメージとしてレイヤー化された多層構造で組み上げられている。視点の運動と連動するように色彩や図像が移り変わって認識される造形は、キュビズム表現における認識論のいわば現代的な解釈とも捉えることができる秀作である。