歴史遺産学科Department of Historic Heritage

木村当意|民俗芸能を映した映像記録と技術をめぐるエスノグラフィ ー継承に取り組む東北地方の民俗芸能を事例としてー
宮城県出身
松田俊介ゼミ

 近年、民俗芸能は、各地で担い手の確保と後世に伝える継承方法を課題としている。その方法の1つとして、映像による記録保存がある。
 民俗芸能が記録された映像としては、保存会での練習用映像、研究者?専門職員らによる記録映像やドキュメンタリー映像、愛好家らによる個人的記録など多様な形式がある。
 映像には様々なジャンルが存在し、映像としての見せ方も多岐にわたる。動画配信サイトで公開されている民俗芸能の映像を視聴すると、定点での撮影や「寄り」や「引き」などの映像としての動きの少ない映像、編集がされていない映像が多い。
 本研究では、民俗芸能を映した映像と撮影手法を、映像人類学、映像民俗学の視点から分析し、多様な手法の特徴を把握したい。そして、その理解を基に、東北地方における複数の民俗芸能を事例として、それらの保存?継承?周知に有用な映像記録のあり方について検討した。
 結果として、分析した民俗記録映像や教則用映像YouTube上にアップロードされた映像を観ると、定点撮影や前面と側面を映した映像、必要最低限の編集やカメラ移動で十分である事が分かった。いずれも動画サイトを含めた複数の動画保存が継続されている事自体は、伝統維持の観点からも望ましい状況である。ただし、演舞者すべてを画角に入れ、演舞の全過程を記録したものは、ごく少数だった。
 特に伝統保存において重要といえる映像形式は、舞台裏を収めた映像である。ゴッフマン(1974)は、パフォーマンスの現場においては、表舞台とされる実際に演じられる場を「表局域」、舞台裏とされる企画や準備の場を「裏局域」として、後者の「裏局域」の重要性について論じた。高擶聖霊菩提獅子踊りにおいては、両面が重厚に描かれていたが、その芸能自体だけでなく、芸能を構成する行事の運営がいかにして作られるか、担い手たちのいかなる思いが込められているかが、これらの映像から理解できた。
 また、筆者が調査した他の事例では、演舞を知る人物の減少や、忘却などから、情報不全が生じていた。
今後も、災害や、さらなる人口減少?少子化?祭りの縮小?映像媒体の紛失など、情報不全につながる要因は数多く想定される。
このことから、民俗芸能そのものだけでなく、住民がそこにかける思いをさまざまな手法で撮影することで、映像記録は、その地域の「記憶を補完するもの」として作用し、今後の継承?保存にも有効に機能していくと言える。

1. 届け未来へ 地域の宝 高擶聖霊菩提獅子踊り 舞の奉納の様子

2. 届け未来へ 地域の宝 高擶聖霊菩提獅子踊り 練習の様子

3. 届け未来へ 地域の宝 高擶聖霊菩提獅子踊り 獅子頭の補修風景