文化財保存修復学科Department of Conservation for Cultural Property

渡邉叶帆|寒河江市平塩寺?木造阿弥陀如来坐像における当初表面イメージの復元 ―3Dデータの活用と手板作成を通してー
山形県
宮本晶朗ゼミ

 本研究の対象となる作品は、山形県寒河江市平塩寺に安置されている木造阿弥陀如来坐像である。本像は、南北朝時代に制作されたと考えられており、両脇侍菩薩立像とともに県の文化財に指定されている。指定された当初は、表面塗膜の剥離や部材の欠損があった。この損傷に対して、東北古典彫刻修復研究所によるクリーニングや欠損部の補作などの修復が実施された。本像の表面の状態として、肉身部に膠で金粉を溶き練った金泥、衣部には金箔、金箔を直線状に細く切った截金の文様、胡粉を膠で溶き文様を高く盛り上げる置き上げが施されていた。これらのことから、本像の当初の表面は、全体が金色で衣部には各文様が施されていたと考えられる。しかし、経年劣化により現在は、一部を除き剥落している。
 同寺の住職は、「現在の本像の状態だと制作当初の姿が想像しにくいため、当初金色の姿を復元して実感できるようにしたい。そして、その姿を檀家や参拝者に見てもらい、当初のイメージを伝えたい」と考えている。しかし、本像そのものの表面に当初の復元をすることは、本像自体が持つ本物としての価値を害する。
 そのため、本像には直接介入せず、立体の情報を保ちデータ化できる3Dデータでの復元を考えた。当初表面の復元をした写真だけでなく、3Dデータ上での復元をすることで、文様の場所や全体の印象などの情報を詳細に残すことができる。そのため、本研究では、3Dデータを用いた制作当初表面の姿を復元することを目的とした。
 截金は平面で、色と形状は3Dデータでの復元をした(図2,3)。住職や東古研の渡邉氏に復元前と後の3Dデータが回転している動画と、截金の復元した完成図を見て頂いた。その結果、「感動しました。ありがとうございました。」や「よくできている」といった感想を頂いた。このことから、色や置き上げ、截金などの復元をしたことで、当初の姿を一程度可視化できたといえる。そして、色と形状を3Dデータ上に復元したことで、より想像しやすくなったと考える。そのため、復元した意義があったと考える。
 他方で、動画を見せた時に、「復元した金箔に違和感がある」という意見や動画への修正点があった。このことから、今後も同寺の檀家や参拝者などが動画を見れば、復元後の姿に違和感を感じる人が出てくる可能性がある。そのため、今後は、動画に復元した過程の説明や画像を追加して、より理解してもらえるように工夫していきたい。

1. 本像の3Dスキャンデータ

2. 3Dデータ復元

3. 截金復元