大学院Graduate School

藤田純平|日英の住宅における庭の使われ方に関する研究 ―庭に面した室内の機能と庭の関係―
岩手県出身
山畑信博ゼミ

 日本の住宅の庭はほとんど使われていない。一方、イギリスでは庭を活用している。両国とも地方の分譲地に多くの庭付き一戸建て住宅が建てられた。主に中所得者が住んでおり、平日は近くの大きな町へ仕事に行く人が多い。休日になると庭で作業をしたり、家族でバーベキューをしたりといった生活をしている。日本もイギリスも住宅を建てる、または、買った時から庭を自分で作る。作った庭を見て楽しみ、庭で時間を過ごす。イギリスでは、休日庭に時間を割いて作業したり、家族で食事をしたり、外出せず庭で寛いだりと、庭を活用している。一方、日本ではそのような生活をしている人が減った。休日は家の中で過ごすか、外出するようになり、庭を活用する機会が減った。
 考えられる理由の一つとして挙げられるのが気候の違いだ。日本は夏季に気温が高く、雨量も多く、蒸し暑い。一方、イギリスでは日本ほど気温や湿度が高くないため、外にいても快適な温度である。また、気温と雨量の関係で、日本は蚊がイギリスと比べてとても多い。日本では気温が高く、雨も降るので蚊が住みやすい環境となっている。イギリスは夏季の雨量が少ないため蚊が繁殖しにくい環境にあるといった理由も挙げられる。
 文化の違いも考えられる。日本では玄関で靴を脱ぐため、庭に出るためには靴やサンダルを履く必要があるが、イギリスでは靴を履いたまま出入りする家庭が多いため、そのまま庭に出られる。これにより庭に出るということが容易になる。さらに日本はイギリスと比べ、地面から少し高い位置に床がある。そのため日本の住宅と庭の間には段差というバリアがある。
 同じ庭の使い方になぜ違いが生まれるのか、一般的には気候や風土、文化によって違いが生まれるといわれているが、私は住宅と庭の配置、庭に面した空間、庭の使い方、余暇の使い方など、他の要因があると考える。本研究では、イギリスと日本の中所得者の庭付き一戸建て住宅における、庭に面した空間や室内空間、庭の使い方をもとに、なぜ庭の活用方法に違いが生まれるのかを明らかにする。