建築?環境デザイン学科Department of Architecture and Environmental Design

[優秀賞]
覚張日梨|形ないものを形作る
神奈川県出身
佐藤充ゼミ

模型人々は形のないものを形作ることをしてきた。それらは人々の思いが実体になったものである。神棚や慰霊碑、神社やお墓などもそうと言える。その形の残ったものは何故か何か感じるものが ある。美しい風景や歴史、現代にあるものなど、後世に残していくべきものを残すためにそんななぜか抗えない日本人の信仰心を 利用し、歴史を後世残していくための形づくりをしてゆくことが 現代の歴史を語り継ぐ一つの橋になるのではないだろうか。


佐藤充 准教授 評
墓標、神社、記念碑など人類は、悠久の昔から形のないものを形作ってきた。この人類の精神性から生まれる建造物について探究してゆくなかで、覚張さんは、「時の栞」という概念に辿り着く。
対象地は、蔵王鉱山跡地である。明治から昭和初期まで日本の経済成長を支えてきた蔵王鉱山は、国内有数の硫黄鉱山であった。しかし、その鉱山の歴史を知るものは少ない。本作品は、鉱山の麓から硫黄の貯蔵遺構を結ぶ約3.5kmの参道によって構成された、この地の歴史を祀る神社である。蔵王石が敷設された参道に鳥居と坑道内の支柱を模した木製の道標を設け、建物の基礎や索道のワイヤーなど、今も尚、鉱山跡地に点在する当時の営みの断片をモニュメント化した休憩所、視点場にて埋没した歴史を顕在化させる。道標やモニュメントは、時と共に朽ちてゆく。しかし、その片鱗は、「時の栞」として我々に静かに語りかけ、記憶のリレーは続く。歴史が息づく建築である。