[優秀賞]
渡部信隆|時空の寄せ切れ
宮城県出身
吉賀伸ゼミ
可変
鉄内と外に広がる空間。それは互いに影響を及ぼす動的な関係にある。
吉賀伸 教授 評
宇宙にきらめく星雲のような、身体の深層部でうごめく細胞のような、不思議なスケールを感じさせる作品だ。たしかに、作品の素材とした鉄が、地球を形成する物質でありながら私たちの血管にも流れていることに思い至れば、大いなる自然と生命をつなぐ壮大な風景が広がっていく。平たい鉄板から切り出された有機的な曲線が立体的に絡み合い、ミクロとマクロの相似的な形の連鎖が魅惑的な光沢を伴って、果てしない想像の世界へと誘ってくれる。タイトルに「時空」とあるように、鉄の柔軟性と展開性を存分に引き出しながら、彫刻に特有の空間と時間を表出させた傑作である。
この集大成に至るまで、渡部くんはいつも膨大な熱量を作品に注いできた。彼ほど金属工房で四六時中制作に打ち込んだ学生を、私はこれまで見たことがない。まるで求道者のように素材と対話し、理想とする空間を思い描きながら探求している。まだまだ、答えの出ない旅の途中。これからもさらなる高みを目指し、制作に邁進することを期待したい。