美術科 洋画コースDepartment of Fine Arts Oil Painting

[優秀賞]
木村晃子|GOLDEN PET BOTTLE
福島県出身
青山ひろゆきゼミ
短編フィションドキュメンタリー「黄金のペットボトル」

社会問題である尿入りペットボトルの不法投棄をアートプロジェクトでの解決を目指す。
“Golden PET Bottle” – A Short Fictional Documentary


青山ひろゆき 教授 評
社会問題に目を向け、強い意志で表明した意義深い作品である。これまでの歩みは、アートの可能性と価値を探る実験の繰り返しであった。特に3年時のインスタレーション課題においての試みは、本学生の転機となったように思われる。表現の在処をフィールドワークに見出し、作品を実社会に介入させていった。強烈な個性を放つショッキングピンクの巨大な「巣」とギャル文化を相似させ所在の不在性や本質と現象を世の中に問いかけた。その後も、社会を俯瞰する視点で独創的な表現を展開させ本作品に至っている。本作品は1年間かけて地元福島の勢至堂峠に不法投棄された大量の尿入りペットボトルの環境問題を取り上げ作品化している。現地での清掃活動やトラック運転手へのインタビューから見出した問題の細分深化。有識者への取材と文献購読、そしてクラウドファンディングによる拡散。それらを通して映画化へ昇華していった。初監督として脚本からキャスティングまで圧倒的な情熱と行動力で完成を導いた。この活動は多くのメディアでも取り上げられ、問題への関心を広く高めることにつながっている。斯くして、ここまで社会問題をストレートに取り上げ、実写で表現する学生は過去にいない。
ソーシャルエンゲージドアートというジャンルを飛躍させ、世の中におけるアートの価値を拡大していく可能性からは、今後どのような視点で社会を捉え作品化するのか期待感を強く感じる。