歴史遺産学科Department of Historic Heritage

阿部丈朗|西馬音内盆踊りの始まり -伝統芸能の継承と持続‐
秋田県出身
田口洋美ゼミ

伝統芸能は少子高齢化や市町村の過疎化により後継への継承、行事の持続が困難になることが問題となっている。さらに、近年ではコロナ禍により行事を行うことや、仲間士で集まること自体が困難となった状況である。しかし、ネットでの配信やSNSでの情報発信等(図1)の新しい可能性が生まれるだけでなく盆踊りは市町村内の人達以外にも外部からの参加者が増え、観光資源としての新たな可能性が秘めている。私は最初に西馬音内盆踊りの独特の雰囲気、踊り手の衣装に興味を持ち、西馬音内盆踊りの歴史を辿っていく中で少子化や後継者不足、新しいものではコロナなどの課題も浮き彫りとなった。知ったからこそ私は、この現状と向き合い、時代に合わせた対策の背景を知ってもらいたいと感じている。本研究では、西馬音内盆踊りを取り上げ、文献と聞き書きでの調査研究を行い、盆踊りの始まり、コミュニティ(図2)としての役割を明らかにし、盆踊りの本質を再確認していく。また、盆踊りのコミュニィとしての今後の役割、コロナとの向き合い方、後継について羽後町みらい産業交流課 観光交流班の方へのインタビューと新聞の記事を中心に考察していくことを今回の目的とする。西馬音内盆踊りは秋田県羽後町で毎年8月16日~18日の3日間開かれる伝統行事であり、国の重要無形民俗文化財でもある。徳島県の阿波踊り、岐阜県の群上踊りを含む日本三大盆踊りと言われており、起源は口碑によると(1288~92)に源親という修行僧が蔵王権限(御嶽神社)の境内で豊年を祈って住民に広めたと記録されている。盆踊り口説き―諸国音頭集―では『民俗学辞典』、一遍聖絵等の文献や資料と聞き書きを基に盆踊りの始まりについて、盆踊りの歌詞の口説についてまとめている。五来重著作集民間芸能史では踊念仏、念仏踊りについて取り上げており、文献と論文の情報を基に考察を述べている。念仏芸能と御霊信仰では民俗芸能と死者供養との関係性、とその始まりについて、一遍上人について、念仏の芸能化について等の仏教研究を現存民俗資料を用いて史料の足りない部分を補いながら行っている。『西馬音内盆踊り』わがこころの原風景(図3)では羽後町についての風土や著者が見てきた原風景について経験談を基に述べられており、音頭の歌詞、盆踊りの衣装、踊りの振り付けについてもまとめられている。

1. 伝統芸能の課題

2. 西馬音内盆踊りとは

3. 先行研究のまとめ