[優秀賞]
児玉妃世莉|∞÷?
埼玉県出身
長沢明ゼミ
1270×3300 和紙、岩絵具、胡粉、土絵具、箔
神の死んだこの世でおきつねさまが神を騙って可哀想で愛しい全人間の呪いを叶え解き放とう。
解 分子の果てにまで分解されども、いずれ遠い未来の生命に組み込まれてはまた崩れるだろう。
完全な消滅も終わりも許されない、永遠に彷徨い続ければいい。
長沢明 教授 評
丹念に塗り重ねられた「白」に引き寄せられる、霊妙な魅力を感じさせる作品。
雲なのか煙なのか分からない「白」のうねりが、やがてはきつねの姿になり画面上を覆い隠している。白狐伝説の中では、おきつねさまは神の使いと云われている。そんなふうに神聖なイメージを重ね合わせてみるのは容易いが、それだけではこの作品を表すにはおさまらない。なぜならば作者の念ともいえる一筆一筆の積み重ねられた「白」がうねりとなって、静かな憤りをも感じさせるからだ。
「白」の奥に目を向け想像してみよう。作者は制作当初、その奥に幾つものネガティブなイメージを混沌と描いていた。戦争や悲劇、直視し難いものばかりだ。作者のことばで言えば、全人間の呪いなのだという。それらを巻き込みながら「白」で塗りつぶし、消し去ってしまいたいのか、それとも昇華されることを願うのか?
憤りつつ祈る。エキセントリックな児玉さんらしい表現だ。