美術科 洋画コースDepartment of Fine Arts Oil Painting

[優秀賞]
太細春乃|私のFACEⅢ
東京都出身
細川貴司ゼミ
2800×5200mm パネル、木炭紙、木炭、コンテ

私は私の存在を許すために私を描く



細川貴司 准教授 評
「これまで、太細さんの自画像を何度か見てきた。いずれも屈託のない、手で顔を歪め、茶目っ気のある顔の絵だ。観る人に「私はこうです」と主張するかのような衒いがない自画像である。彼女は予備校時代に受験デッサンで鍛え上げた木炭デッサンの技術を持ち、油彩よりも絶対の自信を持っている。1年生の時には、フェイス展入選作として、デカデカとはみ出しそうな顔面が描かれた自画像S100号がある。?
2年生になる直前の展示発表では、膨れっ面の顔を描いていた。今考えると、この時にコロナ禍を予感したかのような顔つきに感じる。友達とのふれあいが生き甲斐だった彼女にとって、部屋に閉じ籠ることを余儀なくされた暗い時期の到来となってしまった。1年次あれだけ元気だった太細さんが沈黙した。現実と向き合い傷つく自分、様々な面で人との関係で悩んだこともあったかも知れない。しかし、自己を見つめ直し自画像を描くことが一つの道標になったのだろう。そして、3作目となる「FACEⅢ」。安定や安心を表すシンメトリー構図。写し鏡のように多くの自分が現れた。自分の姿を素直に見つめることで冷静さを保ち、新たな未来へ羽ばたこうとしているようだ。」?