[優秀賞]
和田竜汰|5つを宿すまでと、その中の1
北海道出身
狩野宏明ゼミ
1818×2273mm 3枚 パネル、石膏、油彩、銀箔
狩野宏明 准教授 評
和田さんは、3年生で受講した箔を使用した絵画表現の授業が転機となり、作品が飛躍的な展開を遂げた。玉虫色に変色させた銀箔を細い短冊状に切って丹念に貼り付けていく技法を考案し、デジタル加工した写真をもとに油彩で描いた人物と組み合わせることで、テレビなどの映像の乱れを想起させるような絵画表現が生まれた。「箔をこのように使う絵画作品は見たことがない」という授業担当教員の言葉がその後の作品展開の後押しとなり、コンクール等での受賞を重ねた。?
彼は「黙々と箔を貼るのが性に合っており、この技法を使うようになってから作品のコンセプトも明確になってきた」と語る。本作は、彼の祖母、母そして架空の姉の肖像であり、家族との対話を経て生み出された。彼の実感を伴った存在論的思考と、途方もない時間を要する箔貼りそして高校?大学で培った高い描写力が作品に結実した。?
T.I.P(TUAD Incubation program)のアトリエを覗けば、朝から夜まで制作を続ける姿が常に見えた。すでにアーティストとして着実に歩み始めている彼のさらなる展開がとても楽しみである。?