[優秀賞]
鳥毛遥|かわりゆく/「わたし」/あいのおおきさ/きのむくまま/わたし
1700×600×600 セラミック
吉賀伸 教授 評
どのような学問でも、ほんとうに意義のある研究には深い内省が伴うものだ。芸術?彫刻も同じく、心に訴える表現に至るまでには自分自身を掘り下げることに相当な時間を要する。ただ好きなものを作るだけでなく、作ることを通して自分の内面を探究し、新たな自分を見つけ、成長させること。鳥毛さんはまさにそのような姿勢で制作に取り組んできた。今回の集大成は、自分を内観する哲学的な問いに真摯に向き合った「自刻像」とも言えるだろう。自分を明らかにするということは影を追いかけるようなもので、常に存在を揺さぶる不安の感情との闘いでもある。
周囲に溶け出すような形と質感。ヒトガタの断片による構成。鑑賞者に思索する時間をもたらし、世界の流動性を感じさせてくれる。陶という素材の魅力をうまく引き出すことで、テーマとは裏腹に軽やかな空間を作り出している。内省から解放された、新鮮な彫刻として自立している。卓越した客観性と研究の蓄積。鳥毛さんの今後の展開に期待したい。