[優秀賞]
高橋飛名|再会
宮城県出身
佐々木理一ゼミ
450×250×350 陶器、マニキュア、レジン、ベロア
この作品は私の愛犬の遺骨入れである。私はまた亡くなった愛犬に会いたいという思いから実際に会うことは叶わなくても遺骨入れにすることで間接的にさわったり撫でたり交流することができるものをとこの作品を作った。陶器だからこそ柔らかく見えながら硬い、変わることのない毛並みと豊かな表情を表現することができた。彼女の表情は私の記憶にある中で一番笑顔を思い出しながら作られた。
佐々木 理一 准教授 評
古代ギリシャでは陶器の骨壷に花を飾り、墓前にレキュトスという美しく装飾された陶器を供えていた。生きたことの証を愛でて、死後においても幸せを祈ろうとする尊さの表れとも言える。創造されていくための明瞭な理由である。この作品は作者の深い愛情によって凛とし美しく堂々とした姿に仕上がっている。
陶磁器素材の実験、高度な技法の習得によって陶芸の科学が有効に活かされている。見事な毛並みにおいて粘土の可塑性を活かしたテクスチャーは、前脚の爪先までに至る繊細な骨格、肉体の様子を的確に捉えられている。透明感溢れる濃い瑠璃色の釉薬は眼球の強い生命力と神秘的な効果になっている。また器としての装飾や金彩の風合いにも洗練された表現がなされ工芸の魅力にも繋がっている。
実像より本物らしさを感じ語りかけてくる表情、切なくも生き生きしたこの作品は、芸術大学での4年間の素直な取り組みと人生における葛藤の産物である。