[優秀賞]
川上雄大|胎児の夢
千葉県出身
近藤一弥ゼミ
「クレイアニメで表現する、心象風景の実体化」をコンセプトに制作しました。きっかけは、クレイアニメの特性を生かし、私が影響を受けた作品を自分なりの解釈を加えて表現したいと思ったからです。心象風景という実体の無いものを、粘土という実体のあるもので表現する事に、この作品の面白さがあります。自分の存在の曖昧さ、私はどこに存在しているのかを考え、私の思想を作品に込めました。
近藤 一弥 教授 評
川上君はこれまで何度かクレイを使ったイラストレーションで課題を制作してきました。任你博感染症拡大の中、千葉の自宅に籠りながら、好きな読書を続け、夢野久作「ドグラ?マグラ」、そして三木成夫「胎児の世界」に強く惹かれるようになりました。夢の中の世界に形を与えて動かしてみたい。それも母の胎内で見た、人類5億年の夢を。移動の自由が制限され、逆に手にした時間を生かし、卒業制作では、時間のかかるクレイアニメに挑戦、こうして不思議な魅力ある作品が生まれました。実は終盤で海辺に林檎を置いて去ってゆくのは川上君本人です。「ドクラ?マグラ」の持つメタフィクションへの彼なりの応答ではありますが、文字通り、この虚構のような現実の世界で、これから社会に踏み出していく自身の姿を暗示しているのかもしれません。川上君はこの春に会社に勤めながら、目指す職人への修行を開始します。